ダウン症の子どもと発育~コミュニケーション・PECSの利用~
こんにちは。ガイドヘルパーとして働いております、るりと申します。
ダウン症で重度知的障害を持つ弟がいる、姉でもあります。
前回の記事では、ダウン症の子どもの知的な発達について、PECSに着目してご紹介しました。
今回は引き続きPECSに着目しながら、よりコミュニケーションに特化した発達支援をご紹介いたします。
*本記事では、障害を社会モデルで捉え、社会側にある障害に自覚的になり、改善するように働きかけたいという願いを込めて、あえて「障害」と表記します。
目次
コミュニケーション支援ツールPECSとは
PECS(Picture Exchange Communication System)は、絵カードを用いてコミュニケーション能力を育成する手法です。
PECSによって、言葉による表現が難しい子どもたちが絵カードを用いて意思を伝えられるようになることが、様々な研究によって報告されています。
PECSは6つの段階で構成されています。最初は子どもが「欲しいもの」を絵カードを使って伝えることから始まります。徐々に文構成や質問応答などの段階が上がるように作られており、最終的には音声言語の発達の練習も行うことができます。
PECSの特徴は、単にカードを使うだけでなく、適切なタイミングで褒めたり、ご褒美などを使うことで、モチベーションの維持ができることです。
PECSを用いることで、コミュニケーションが円滑になり、自己表現の機会が増えることで子どもの心理的安定がもたらされます。
また、障害によって言語発達が遅れている場合でも、絵カードを通じた表現の成功体験を蓄積することに繋がり、ここで培った自信が、言葉を使ったコミュニケーションへの橋渡しとなります。
PECSによるダウン症児のコミュニケーション発達支援の効果
PECSは、ダウン症児の持つ「人を意識する能力」や「伝えたい意図」を活かすことができます。
特に、文字と音の対応関係を理解しているのであれば、視覚的な支援を通じて構音の改善や語彙の増加など、言語発達にも効果があるとされています。
PECSの導入をさらに効果的にするには
PECSは、PECSの指導者と保護者が連携し、指導内容や目標を共有することでさらに効果的になります。
PECSを家庭でも導入し、継続的に取り組むことが、お子様のより大きな成長に繋がります。
発語に課題があるお子様とのコミュニケーションツールとしてのPECS
今回は、PECSをダウン症児のコミュニケーション支援ツールとしてご紹介しておりますが、自閉症スペクトラムや発達障害を持つ子どもにも効果があります。
一般論ですが、発語がない、または言葉の習得に遅れがみられるお子様をもつ保護者様のなかには、お子様が2~3歳になっても言葉によるコミュニケーションが成立しないことから、親子関係をどう築けばよいか悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
あるいは、お子様の情緒が不安定になっているが、お子様の発語が乏しいことから、不安定な原因がわからず悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。
このような事態は、PECSなどの言葉の代替となるツールでお子様の意思が確認でき、お子様への理解が少しずつ進むことによって悩みが解消されることがあるでしょう。言わずもがな代替のコミュニケーションであっても、お子様の理解の手がかりになるのであれば、早期に取り組む方が望ましいと考えます。
まとめ
コミュニケーションが発達すると、ダウン症児の潜在的な言語能力や意欲が引き出され、対人関係の形成や拡大につながるとされています。
弊社でも、ひとりひとりのお子様に寄り添った支援を行っており、PECSの導入にも意欲的に取り組んでまいります。
何かお困りの際は、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【参考文献】
川村菜月,落合利「言語障害を伴うダウン症者への PECS を用いた コミュニケーション指導に関する研究」,2023京都女子大学発達教育学部紀要19,9-19
加藤弘美,筒井聡子「重度知的障害児の言語コミュニケーション障害への指導:幼児と特別支援学校高等部生徒における早期AAC手段導入の事例を通して」,2019,広島都市学園大学子ども教育学部紀要(6)-1,3-15
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