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ダウン症の子どもと発育~知的・PECSによる支援~

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こんにちは。ガイドヘルパーとして働いております、るりと申します。
ダウン症で重度知的障害を持つ弟がいる、姉でもあります。

前回の記事では、ダウン症の子どもの身体的発達についてご紹介しました。
今回は知的な発達についての説明と、具体的な支援方法について、実際に私の弟の経験と合わせてご紹介できればと思います。

*本記事では、障害を社会モデルで捉え、社会側にある障害に自覚的になり、改善するように働きかけたいという願いを込めて、あえて「障害」と表記します。

 

ダウン症児の知的発達の特徴

ダウン症の子どもたちは、言語や記憶、集中力、理解力などで、一般的な発達速度に比べゆっくりと進行する傾向があります。
言語の発達は、語彙や文章の理解の遅れに加えて、口腔の発達の遅れによって、発音が難しくなることが原因とされています。

また、短期記憶が苦手なことも多いようです。
情報を記憶し続ける力が弱いため、理解するために時間がかかる要因となっています。
さらに、抽象的思考に難がある場合もあります。
そのため、学校生活のルールなどを理解するのに時間がかかったり、自己管理の困難さへと繋がるかもしれません。

加えて、周囲の人に頼ったり、助けを求めることを苦手とするダウン症児も多いようです。
私の弟は、痛みを伴う治療中に、「痛かったら教えてね」という呼びかけの意図は理解していたものの、声をあげることができずに卒倒したことがありました。
痛みなどの生命に関わる感覚であっても、周囲の人に助けを求められないというのは、家族としてはショックなできごとでした。

一方で、ダウン症の子どもたちは視覚的な学習に優れている傾向があります。
さらに、身体発達でもご紹介した通り、音楽やリズムへの感受性が高い子どもが多くみられます。

以上のような特徴を持つダウン症児の知的発達を促進するには、幼少期からの介入がとても大切です。
実際に、ダウン症児向けに理学療法、作業療法、言語療法などが行われています。
私の弟も幼少期から言語療法に通い、不明瞭だった発音のうち、「か行」「さ行」「た行」「ら行」などの子音の発音が、ある日唐突にはっきり発音できるようになりました。
言葉の発音が明瞭になることは、彼自身にも単語の区別や理解に良い影響を与えているように思います。

知的発達の乖離に対しては、年齢が上がるにつれてその差が大きくなるとされています。
幼少期には健常児との発達の差は目立たない場合が多いです。
ただ、学年が進むとともに、実年齢と発達年齢の差が顕著になることがあります。
私の弟の場合も、実際の年齢よりも発達年齢がかなり遅く進んでいくため、乖離は大きくなって来ています。
そうはいっても、日常会話レベルでは概ね意思疎通ができる程度には成長しています。

 

知的発達に対する具体的な支援方法

では、上記のような特性を持つダウン症児の知的発達のためには、どのような支援方法があるのでしょうか。
一つは、先ほどご紹介したように、音楽やリズムへの感受性が高い子が多いため、音楽療法やリズムに合わせた遊びが発達に効果的とされています。
これは、単に知的な発達だけでなく、情緒の安定や社会性の向上の支援にもつながります。

また、短期記憶や抽象的理解の発達を補助するために、繰り返し学習が有効であるとされています。
繰り返し学習とは、絵カードなどの視覚的なツールを活用して、何度も反復することで理解を深める方法です。
弟の場合は、痛みで声をあげられなかったので、痛いときは手を挙げるということを何度も絵を見せながら練習しました。
歯医者さんでその学習の効果は出たようで、控えめでしたが手を挙げられるようになりました。

日常生活に関する動作も、同様に絵カードを利用した繰り返し学習で身に付いたように思います。
さらに具体的な支援として、絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)の活用が行われています。
PECSは視覚情報を通じて自己表現を補助するものです。
PECSは6段階のフェイズに分かれており、フェイズII以降での視覚的言語表現は、言語の発達に効果があることが研究で示されています。
特に二語による発語がみられる段階の発達年齢において効果が高く、絵カードや文字によって構音や語彙の改善が見られる場合が多いとされています。

このようにPECSを通じて自己表現が促進されることで、発語や意思表出が増加するだけでなく、発音の明瞭化を図ることも期待できます。
絵カードやPECSなどの視覚支援を使うと、かえって言語の発達を妨げるのでは?という不安もあるかもしれませんが、そのような弊害はありません。
視覚支援を導入後は、学校やデイサービス、家庭で連携し、同じツールを使って支援を続けることで、ダウン症児の混乱を防ぎ、より効果的な支援へと繋がります。

 

まとめ

ダウン症児の知的発達の傾向や事例と具体的な支援例をご紹介いたしました。

お子様の言語の発達にご興味のある方は、一度視覚支援にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。
弊社でも、ひとりひとりのお子様に寄り添った支援を行っております。
何かお困りの際は、お気軽にご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

【参考文献】
川村菜月,落合利「言語障害を伴うダウン症者への PECS を用いた コミュニケーション指導に関する研究」,2023京都女子大学発達教育学部紀要19,9-19

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