知的障害者と結婚の現状と課題
こんにちは。ガイドヘルパーとして働いております、るりと申します。
ダウン症で重度知的障害を持つ弟がいる、姉でもあります。
今回のテーマは、結婚です。
障害とともに生きていく方々の中には、ご結婚される方もいらっしゃいます。
障害の程度や種類によって変化する部分もありますが、結婚は健常者であっても様々な形があるものです。
そこで、本記事では、主に知的障害をお持ちの方の結婚についての現状と障害によってもたらされる障壁についてご紹介します。
*本記事では、障害を社会モデルで捉え、社会側にある障害に自覚的になり、改善するように働きかけたいという願いを込めて、あえて「障害」と表記します。
知的障害者の結婚についての現状
まずは、知的障害者の結婚生活についての現状を見てみましょう。
『平成 28 年度生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査結果)』(厚生労働省)によると、4.3%の知的障害者が婚姻していると発表されています。
この数字を見て、意外と多い!と驚かれる方もいらっしゃると思います。
しかし、身体障害や精神障害をお持ちの方に比べて、1/10以下の割合となっており、依然として知的障害者の結婚は難しいとされていることが推測できます。
また、知的障害者の結婚に関しては、知的障害者と密接に関わる人(家族や支援者)であるほど、否定的であるということが示唆される調査結果も存在しています。
一方で、過半数の知的障害者が恋愛や結婚への関心を持っているという調査結果もありました。
そして、実際に知的障害を持つ方とのカップルも存在します。
その場合、多くはカップル両名ではなく、一方のみが障害者となっています。
さらに、健常者の男性と知的障害を持つ女性というカップルの場合の方が、子育て等を含むライフイベントをより経験しやすい傾向にあるようです。
この場合、カップルの女性側は中度の判定が9割を占めているという結果が出ています。
知的障害者の結婚における障壁
上記のような現状を踏まえると、知的障害者を含むカップルは結婚願望がありながら、近しい人々には困難だと判断されていると考えられます。
ではなぜ困難だと思われているのでしょうか。
具体的に、知的障害者が結婚生活を営む場合に立ち現れる障壁は、大きく分けて3つ考えられます。
一つ目は、障害者の親族からの支援不足です。
先ほどの現状でも、家族からの理解の方が、一般社会の人々より少ないという結果が出ていました。
この原因は、私自身も支援者・きょうだい児として知的障害者の方と密接に関わってきたからこそよくわかります。
障害者の方をずっと見てきて、いかに自立して生活していくことが難しいのかを痛感してきました。
弟が、時計を読めるのに何年かかったか。
これから二人で過ごしていくとなると、生活できるだけの稼ぎを得たり、家事をできるようになる必要があります。
どれくらいの年月をかけて、一人でできるようになるのかを考えると諦めてしまいたくなるものです。
だからこそ、結婚した後はできるだけ自立してやってほしい、という思いが出てくるのではないかと感じます。
二つ目は、福祉サービスの利用率の低さです。
多くのカップルでは、知的障害を持つ女性が妊娠をきっかけに、障害者福祉サービスを利用し始めるようです。
これは裏を返せば、妊娠して限界を迎えそうになってから初めて、利用するとも言えます。
二人での共同生活でも、おそらく健常者よりも難がある部分が存在するはずです。
ただ。その度に「障害者」というスティグマ(負のイメージ)を乗り越えるのが大変で、利用していないと考えられます。
あるいは、利用方法がそもそもわからない、知らない場合もありうるでしょう。
三つ目は、健常者の親が利用している地域サービスを、利用していないという点です。
子育て中には、申請することで利用できる支援(ファミリーサポートなど)や、コミュニティにもなる児童館などの地域サービスが存在します。
しかし、知的障害を持つ親の場合、その存在を知っていても、利用方法がわからなかったり、そこに行きつくまでに障害がある可能性もあります。
以上のように、大きく分けて3点の課題が挙げられます。
次の記事では、これらに関する支援体制についてご紹介いたしますので、お読みいただければ幸いです。
エコルド川口教室でも障害をお持ちのお子様に関する相談を、ご利用の際に承っております。
お気軽にお声掛けください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【参考文献】
- 杉本明生,末光茂「知的障害者の結婚と子育ての困難さに関する家族への支援体制の文献的検討」,2018,川崎医療福祉学会誌,27-2,491-494
- 延原稚枝,名川勝「知的障害のある人のカップル生活・子育てに関する実態並びに 知的障害のある母親のソーシャル・ネットワーク — 指定特定相談支援事業所への質問紙による調査 —」,2021,障害科学研究,45,103-116
- 石黒慶太「知的障害のある成人男性の性を支援するとはどういうことか : 結婚支援に関与する女性職員の語りから」,2022,神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,16(1),1-17
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