自閉症のお子様が指さしをしない理由と指さしの練習方法をお伝えします
こんにちは。保育士ライターのつばきです。
今回は指さしの重要性や自閉症のお子様が指さしをしない理由や支援方法についてご紹介します。
「うちのこ、指さしをしてくれないんです。何をしてほしいか分からなくて母親として申し訳なくて…。」
「指さしが出来ていないことを検診で指摘されました。うちの子は自閉症なのでしょうか?」
あなたはこのようにお悩みでこちらのサイトを訪れたのでしょう。
不安を抱えながらお子様と向き合い、声をかけたり、ネットで調べたり、お子様が好きなおもちゃを渡したりお子様のそばにいたのかもしれません。これらは必ずお子様の糧になっています。
今回は自閉症のお子様が指さしをしない理由や、なぜ検診や発達検査で指さしを指摘されるのか?加えて、指さしの練習方法などをお伝えします。
目次
指さしとは?|指さしの発達の流れ
さっそく指さしについて解説していきます。
指さしとは、乳幼児期のお子様で、「指先の延長線上にある対象(おもちゃ、食べ物などのものから太陽やお花などの自然物、人、動物などの生き物も含む。)を周囲にあるほかのものから抽出して、指さしすること」だと定義されています。
言葉が徐々に出てきそうな時期ではあるものの、はっきりとした音声や単語が出てこないため、お子様と関わる際に指さしができたら、もっとお子様の気持ちわかってあげられるかも、と期待している方もいらっしゃるかもしれませんね。
指さしの発達において、この順番通りではないかもしれませんが、以下のような様子で指さしをすることが多いです。
- 人やものの動きをじーっとよく見て観察している様子が見られます。
- おもちゃとお子様、お子様とお母さんのような養育者との関係で、お子様が養育者を見てほほ笑む、お子様がおもちゃを動かす等の二項関係ができるようになります。養育者の働きかけに応答し、自らやってみようとする様子も見られます。大人の話やイントネーションを真似ようと発語する様子も見られます。
- お子様がものに働きかけて遊ぶ様子がみられる。上手くいかないと養育者を探す様子も見られます。人見知りが始まるお子様もいます。
- 養育者が「あれ、車だよー」と話しかけると、お子様が養育者の声を聴き、車の方に目を向けるようになる。お子様が、腕を伸ばし、「あ、あ」のような声を出そうとします。養育者の表情や身振りからお子様なりに汲み取り行動しようとしていきます。これを三項関係といいます。腕を伸ばしている状態から徐々に指さしに変化していくケースもあるそうです。
※あくまで一例ですので、一様にこのような発達をするわけではなく、一人一人の発達スピードもその日できても、安定してできるようになるまで時間のかかるケースもあります。
指さしができるようになり、相手に注目してほしい時や、要求を伝える際に指さしができるようになった後、徐々に発語が出てくる場合があるといわれている。
一方自閉症の子どもは初語が出てきた後に指さしが出てくることもあり、逆転現象が起こる可能性も言われているそうです。先ほど伝えた三項関係が成立していないことで、他者と一緒に何かを共有して楽しむというよりは、困ったときに助けてくれる時に必要な存在であるが、人として情緒的に関わるというよりは、人とものと関わる二項関係として過ごす時間が長いため、指さしに至るまでに時間がかかるのではないかといわれている説もあります。
続いて指さしができるとどんなことができるのか発達検査等で行っていることを簡単に紹介します。
指さしが出来るとできること、発達検査で測ること、指さしの種類
指さしができるとどんな良いことがあるのでしょうか?
1つには、言葉を発しなくても気持ちを伝えあい、コミュニケーションができる可能性があることがあげられます。
例えば、「犬はどれ?」のような質問に対して、指さしやお子様のジェスチャーで伝えられるかなどを問う問題もあるそうです。
指さしには以下のような種類があるといわれています。
- 志向の指さし…養育者や支援者が「あそこにわんわんいるよ」といったときに、そちらの方向を見ることを指します。お子様自ら指さしはしないが、みてほしいものに対して目を向けることを指さし自体はしないことを「志向の指さし」と呼んでいます。
- 感動の指さし…お子様が何かを見つけて(例えば、犬のような生き物、車やおもちゃなど)を養育者や支援者に対して「あれみて」という意図で指さししながら発語であったり、引っ張ってそちらをむくようなしぐさを見せるなどのことを言います。
- 要求の指さし…あれとって、あっち行きたいという意味で、指をさします。
- 応答の指さし…「わんわんはどっちですか?」と尋ねられた時に、指をさしてその子の意思を伝えるような指さしのことを言います。
参考:1歳6か月児健康診査の手引
指さしの練習方法・療育1例
指さしについて研究している研究者が指さし形成にかかわる要素について解説したものがあります。これらを療育や練習の中に組み込んでいくことでお子様の指さし形成に役立つかもしれません。
〇視線・手指運動の発達〇
人差し指だけを突き立てて指を動かすことは指の分離が進むこと、人差し指だけ突き出す形が作れることによって行えます。
その為、人差し指で何かにタッチしてみること、何かを押し込んでみること(プッシュポップなどのおもちゃ)、人差し指で何か(シール、本)をなぞるように促すことで人差し指を突き出す形が作れる可能性があります。
〇三項関係の成立〇
お子様が人に何かを見せにくる、手渡すことができることで徐々に自分とものと相手がいる3項関係ができていきます。お子様が見ているものを支援員や養育者が一緒に見て、声掛けをすることで徐々に3項関係ができていくように支援するのもよいでしょう。
インリアルアプローチと呼ばれる支援も有効です。
〇他者の指さしの理解〇
他者が「ねえ、犬がいるよ」のように、指さしたものをお子様が見てくれるように促していくことで徐々に指さしができるようになるかもしれません。
またお子様が他者に興味が持てるように、お子様の行っている遊びやお子様の興味に養育者や支援員が一緒に入り込むことで、お子様が外界に興味を持ち、すぐそばにいる養育者や支援者に興味を持ち、三項関係の成立が徐々にできるようになるかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?指さしをしないことで不安だとお悩みの保護者様もいるかもしれません。
不安を抱えネットやSNSを使って調べ、「うちの子は自閉症なのではないか?何か子ども自身に困り感があるのではないか?」とお悩みの方もいるかもしれません。
その場合、一人で悩まず専門家にご相談ください。一人で保護者様が悩んでしまうことで、保護者様の不安感や疲労感をお子様も感じ、大好きな保護者様を見て悲しくなってしまうかもしれません。
弊教室でもなんらかの力になれたらと思っています。
参考文献:
中嶋 理香(2007)自閉症幼児における応答の指さしと言語獲得 神戸大学発達科学部研究紀要 14 (2), 31-39
室岡弘明(1985)自閉性障害児の指さし行動と諸要因の検討 情緒障害教育研究紀要 103⁻106
宮津寿美子(2018)発達に伴う「指さし行動」の質的変化ー「一人指さし行動」から「伝達的指さし行動へー 保育学研究 56 巻 2 号 p. 30-38
新潟県医師会 乳幼児健康診査の手引 改訂第5版 P34-57 H26.2.7.indd
コミュニケーションの発達段階表 https://www.kochinet.ed.jp/tosakibo–s/mt/%E2%91%A7%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E7%99%BA%E9%81%94%E6%AE%B5%E9%9A%8E%E8%A1%A8.pdf 2022年6月22日閲覧
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