保育士つばきのひとりごと①|部屋に入れない子への支援の一例
こんにちは。保育士ライターのつばきです。
「今は●●の時間だから部屋に入ってくれないと困るのに…。」
保護者様もお子様は特定の部屋に入らない時どうしたらいいか悩むかもしれませんね…。
今回は、「特定の部屋に入らない子をどう支援したらいいのか?」
私が担当したお子様をもとに、「部屋に入らない要因と私たちの支援方法」について解説していきます。
目次
お子様が部屋に入らない要因
お子様はなぜ特定の部屋に入れなくなってしまうのでしょうか?
いくつかの例を提示します。
要因⑴以前に自分がこの部屋で嫌なことがあった
以前、自分がその場所で相手にいやな思いをさせられた。(怒られた、注意された。自分がしたくないことを強要された。)このように些細なことであっても子どもが嫌な思いをしたことにより、「この部屋に入ると嫌なことが起きるかもしれない。」と不安になるかもしれません。
要因⑵感覚的に不快なものがある。
においが臭い、部屋の中の照明がまぶしくて、目に刺激的で刺さりそう。このようにお子様にとって不安になるような感覚刺激があるとお子様はその部屋に入れない可能性があります。
発達障害のお子様の場合、いくつかのケースで、「感覚過敏」と呼ばれ自閉症の子の特性には目や耳等の感覚器官を通して受けた感覚を過敏に感じる場合があります。お子様にとって不快な感覚があるとその部屋に入ること自体が不快な体験になります。
要因⑶その場所ですることの見通しが立たず不安
この場所で行うことがいつも違う場合、お子様にとって「今日はここで何をするのだろうか?」と不安になる場合があります。
要因⑷お母さん・お父さんのようなお子様が安心できる人と別れて部屋に入るのが怖い
私たちのような児童発達支援事業所の場合、母子分離型の療育施設も少なくありません。お母さま・お父さまが大好きなお子様は、自分の未知の経験をする場所に行くことで不安を感じているケースもあり、しかし施設のルールでお母さまと別れることで不安に感じるケースもあるかもしれません。
要因⑸部屋に入らないという行動をとることで、保護者様に「要求」を伝えている。
部屋に入らないことで、自分が「こうしてほしい」と思っている要求を伝えている可能性があります。
例えばですが、自分は家でアプリゲームをしたいと思っていたけれども、保護者様がお子様の将来を思って、療育室に連れて行った。その為、「僕、本当は家でゲームがしたかったんだよ」と思っていたけれども言葉でうまく伝えられず、保護者様から見たら、「どうしたんだろう?」と思ってしまうような気になる行動をすることで、保護者様に自分がしたくない気持ちやしたい気持ちを伝え、保護者様の注目を集めるケースもあります。
それ以外にも、部屋に一瞬入るものの、衝動性や、部屋の外にあるものに興味をもち、外に飛び出していくお子様もいるかもしれません。部屋に入れないわけではないですが、部屋の中で持続してゆったりと過ごすことが難しいという点では部屋に入れない・入りたがらず不安にいる子どもに対する支援方針と被るかもしれません。
続いて、部屋に入れないお子様への具体的な支援方法の一例をご紹介します。
お子様が部屋に入らない際の支援一例
お子様が部屋に入れない際の支援の一例について先ほどの要因と結びつけながら具体的な支援方法をお伝えします。
要因⑴「以前に自分がこの部屋で嫌なことがあった」に対する支援方針
以前お子様自身が嫌だと思う出来事があった為、部屋に入るのが怖く入れない場合以下のような支援が考えられます。
嫌なこと以上に楽しい経験をその部屋に入る前に行い、「もっと楽しいことが、その部屋でできる事」を伝えていくこともお子様にとって、嫌な記憶が塗り替えられ、「その部屋では、嫌な経験もしたけれど楽しいこともあった。一度嫌なことがあっても、いろんな経験したら、楽しい経験もあるんだな」という経験を通して、不安が軽減するかもしれません。
嫌なことがその部屋ではもう起こらないのであれば、「その部屋は安全だ」と思ってもらえるように、その部屋で楽しそうな遊びをしている様子をズームやライン電話のようなオンラインツールを使って、お子様に見せることで、その部屋への不安感を減らし、その部屋への期待感(その部屋行ってみたいなと思ってもらう)を増やしていきます。
嫌なことがあったパターンの際に、一緒にいた人や一緒に遊んだものではなく、今までとは違うパターンでかつお子様にとって安心できる存在や安心できるおもちゃなどと一緒にその部屋に行ってみる。今までと違うパターンにすることによって部屋に入ってみようと思えるかもしれません。
要因⑵「感覚的に不快なものがある。」に対する支援方針
以前お子様自身が感覚的に不快だと思ったため、部屋に入るのが怖く入れない場合以下のような支援が考えられます。
視覚的にまぶしいのであれば、蛍光灯を豆電球にし、ワット数を変えることでまぶしい環境ではない環境に変える。スヌーズレンのような安心できる環境に部屋を変え、照明を変えてみることで気持ちが楽になるお子様もいるかもしれません。
聴覚的につらい環境であれば、イヤーマフやノイズキャンセリングをした上で部屋の中に入ってみる等を試してみることもできるかもしれません。
嗅覚的につらいのであれば、部屋のにおいを変えてもらえるか相談し、安心できるにおい袋などを持っていき、つらくなった場合におい袋をかぐことで不安な気持ちを軽減できるように支援してみることも可能かもしれません。
要因⑶「その場所ですることの見通しが立たず不安」に対する支援方針
以前お子様がやったことが次行った際に療育的な意図もあり変わってしまう場合、以下のような支援も効果的です。
事前にその部屋に入る前に、行うプログラムやその場面での見通しを立てることも効果的です。幼児のお子様が言語発達をしている段階なので、お子様の特性や発達段階によっては視覚的な支援も効果的です。
事前に、次回その部屋に子どもが来るときにすることを一緒に決めておくのも効果的です。
変更がある場合は事前に伝え、その子の認知特性に合わせて口で伝えるのか、視覚的にカードや動画で見せるのか検討したうえで実行するのもよいでしょう。
要因⑷「お母さん・お父さんのようなお子様が安心できる人と別れて部屋に入るのが怖い」に対する支援方針
お子様がその部屋にはじめて入る際不安になるかもしれませんが、以下の視点を支援方針として考えるとよいでしょう。
その子どもが安心できるグッズをもって一緒に部屋に入る。その子どもに安心できるおもちゃ(ぬいぐるみ)や音楽をかけて安心してもらるのも効果的です。
無理にお子様一人で入れるのではなく、お母さん・お父さんに一緒に入ってもらったり、比較的その子どもにとって安心できる支援員と一緒に部屋に入っていきながら、徐々に新しい環境や別のスタッフとの関係背に慣れていくことも効果的かもしれません。
部屋への恐怖感を減らすために、その部屋で楽しそうな遊びをしている様子をまとめた動画を見る、その部屋にいる支援員とズームでお話してみることなどを通して部屋への不安感を減らしてもらうのもよいでしょう。
要因⑸部屋に入らないという行動をとることで、保護者様に「要求」を伝えている。に対する支援方針
部屋に入らない場合、お子様のおしゃべりが上手にできる、自分の気持ちが伝えられる場合以下のような支援も考えられます。
実際に部屋に入りたくない理由をお子様の答えやすい範囲で聞いてみるのもよいでしょう。答えにくそうであれば、Yes/Noで答えられるような言葉かけで聞いてみたり、絵カードを見せながらお子様の気持ちを引き出していくことも効果的です。
その部屋で頑張って活動出来たらもっといいことがあると伝えてみる。交換条件を伝えてみる。例えば、その部屋に入って遊べたら、「好きなお昼ごはんが食べられるよ」と伝えてみる。もしくはその部屋に入る前に、家からその部屋に向かう際に、お子様にわかる言葉かけで、「その部屋に入る理由、その部屋に入ったらできるその子どものメリット(「その部屋で好きな遊びができるよ」、「好きな先生がいるよ」と伝えるなど)」を伝え、お子様と約束をしておくのもよでしょう。もしお子様が見通しを持つ際に視覚的な手掛かりが必要なお子様であれば「チケット」を作ることで見通しを立てておくことも効果的です。
もしお子様が、部屋に入らないことで保護者様の注目をひいている、構ってほしい様子であれば、一旦保護者様はお子様の安全を確保したうえで、距離をとり、お子様が実際に自分で気持ちを切り替えて部屋に入るまで待ち、過度に声掛けしないなどの支援をすることが効果的な場合もあります。
いかがでしたか?
お子様の状況やお子様の性質に合わせて支援をすると良いと思います。
お子様のこと、事業所のことで何かご相談がありましたらいつでもご連絡ください。
まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。
今回の内容をまとめます。
①お子様がお部屋に入れない理由は、「その部屋で嫌な経験をした」、「その部屋が不快な環境」であるなど様々あります。
②お子様の状況や性質に合わせて支援するとよいでしょう。
③お子様が特定のお部屋に入れない場合、第三者にお伝えして相談し、連携することで部屋の中に入れるケースもあります。
私たちは無理強いせずにお子様に寄り添いながらお子様が部屋に入りたいと思えるように支援していきます。
何かお困りごとがありましたらいつでもご連絡ください。
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